無料で読める多読向け作品 ( Gutenberg Project )

著作権の切れた作品(日本では作者の死後50年)をインターネット上で公開しているサイトはいくつかあり、Gutenberg Project はその代表格。それらのサイトでは無料で過去の名作を読むことができます。
多読ではたくさんの洋書が必要。その購入に結構お金がかかるなあと頭を悩ませている人にはお宝の山……だと良かったのですが、掲載されている作品はどれもこれも難易度が高くて、Penguin Readers Level 6 が読める人でもちょっと厳しかったりするほど(涙)。
でも丹念に探していけばとても読みやすい作品や、有名な作品を retold (難しい単語を使わず易しく書き直し)したものもあったりもします。ほんのわずかですが……。
そういった作品を一覧にしてみました。追加で発見したら随時更新。

表の見方:
・単語数:作品全体の語数。
・語彙数:使用されている語彙数。変化系などは同一視しています。
・FK:Flesch-Kincaid Index計算方法。アメリカの学齢に換算した「読みやすさ」の指標(1 は小学1年、7 は日本で言う中学1年向け)

値は機械的に算出しているので、多少の誤差はご勘弁。
FK は全体の長さとか語彙数などは考慮されていない、難しい単語の出現率のようなイメージです。SSS さんの YL(読みやすさレベル。語数・語彙数・内容も加味した主観的な指標)とは全く性質の異なるものになってます。
Gutenberg Project での作品の読み方
下で紹介しているリンクをクリックすると、作品データのページが開きます。ページの上の方には作品名・作者名・カテゴリーなどが表示されています。
そのページの一番下の方に「Download this ebook for free」として、実際の作品本体の一覧があります。
種類があって迷うところかもしれませんが、「HTML」で「(Compressionが)none」の行の「main site」か「mirror site」をクリックすればそのままブラウザで作品が読めるはずです。「HTML」が無い場合は「Plain text」の行を選びましょう。
retold 作品(易しく書き直された作品)
タイトル 作者 単語数 語彙数 FK
Black Beauty, Young Folks' Edition Anna Sewell 15639 1413 8.4
日本では「黒馬物語」として知られる、映画化もされた作品。主人公である動物の視点からその一代記を描くという作品の元祖だそうな。読んでみると確かにステロタイプな印象はありますが、それは多くの他の作品がこの Black Beauty の形式を真似たということを考えれば、逆に当然とも思えます。そしてそういう作品なだけあってしっかり読ませてくれます。
語数・語彙数より、Penguin Readers でいうと Level4 程度なのだが、retold の出来があまり良くないです。ストーリー上の肝心なところをいろいろばっさり削りすぎていて、残念ながらつまらないものになってしまっています。Oxford Bookwarms Stage 4 の "Black Beauty" も読みましたが、あちらの方がずっとおもしろく書けていてお勧めです。
あるいは、オリジナルの Black Beauty もそこそこ読みやすい方( 62691語/語彙 2657語/FK 8.9 )なので、この自信があれば retold 版をすっとばしてオリジナルに挑戦するのもありかも。
Wikipedia の「黒馬物語」の項
Uncle Tom's Cabin, Young Folks' Edition Harriet Beecher Stowe 16595 1331 4.3
奴隷制反対の立場から書かれた作品。黒人奴隷の老人が白人の女の子と仲良くなって、自由の身を約束されるが……。
アメリカ南北戦争のきっかけになったとも、出版当時「聖書に次ぐ2番目のベストセラー」とも言われたそうな。
この retold 作品は Penguin Readers Level 3〜4 相当、なかなか読みやすく、おもしろいのでお勧め。ラストはちょっと悲しくて泣いてしまうかも……。
オリジナルの Uncle Tom's Cabin は 183,121語/語彙数 6,838語/FK 7.9 ということで、多読を始めたばかりだとちょっと手が出ないレベル。
Wikipedia の「アンクル・トムの小屋」の項
Swiss Family Robinson in Words of One Syllable Johann David Wyss / Mary Godolphin 26492 1298 6.7
スイスのロビンソン一家が船旅の途中で嵐に遭い、無人島に漂着、島でいろいろ見つけたり工夫して暮らしていく。物語のほとんどはその暮らしを淡々と描写。お話がやっと動き出すのは最後の3分の1を過ぎてから。
タイトルの通りほとんど "One Syllable"(一音節) の単語ばかりで記述されている。例外的に使われている二音節以上の言葉は TI-GER や IN-DI-A のように音節をハイフンで区切って表記されていてそれとわかるようになっているが、それすらごくごく一部にすぎない。
そのお陰もあって全体の長さに対して語彙数がとても少なく、とても簡単な英文で書かれている。Penguin Readers の Level 2 くらい? 全体の長さがそこそこあるので、「 Level 2 なら全然余裕だし、ここらで語数を稼ぎたいなあ」という人とかにお勧め。
世界名作劇場「ふしぎな島のフローネ」の原作、と言った方が通りの良い人もいるかも(笑)。
The Pilgrim's Progress in Words of One Syllable John Bunyan / Mary Godolphin 27150 1195 5.9
17世紀に書かれた、キリスト教の伝道師が書いた寓話「天路歴程」。主人公の Christian という名前の男が各地を旅して Zion 山を目指すという話。キリスト教を題材にした「オデュッセイア」のような……。さらに第2部では Christian の妻の Christiana が夫を追いかけて旅に出る。
宗教寓話ということで説教くさくて退屈な話だと思われるかもしれないが、これがなかなかおもしろい。普通にファンタジー世界の冒険譚として読んでも十分楽しめる。実は「聖書以外で、最も多くの言語に翻訳された本」とも言われてるらしい。とはいえ、キリスト教や聖書に全く馴染みのない人にはさすがに厳しいかもしれない。
ちなみに他の登場人物の「名前」も Obstinate とか Worldly Wiseman とか Faithful とか Judge とか Hopeful とかとか、とてもダイレクト。楽しいです。
Robinson Crusoe - in Words of One Syllable Daniel Defoe / Mary Godolphin 27475 1249 6.8
有名な……といっても「名前は知ってるけど読んだこと無い作品」の一つだったりする「ロビンソン・クルーソー」。
おそらく多くの人が「無人島に漂着した男が一人でサバイバルしつつ、最後には生還する」という話だと思っているかも。それは第1部。
一般的には知られていない第2部と第3部があって、ロビンソンが元の無人島に戻って領主のように振る舞うなど、第1部からは想像がつかないストーリーが展開する。この Gutenberg Project に収められている "Robinson Crusoe - in Words of One Syllable" は第2部までが含まれているので、「読んだことのないロビンソン・クルーソー」を楽しんでもらえる、かも。
朗読の音声ファイル もあります。フォーマットが4種類ありますが、どれを選んだらいいかわからない人は "MP3 Audio" にしときましょう。
Alice in Wonderland Lewis Carrol 19868 1308 4.0
「不思議の国のアリス」の1音節版。
Alice's Adventures in Wonderland Lewis Carrol 9628 1214 6.5
「不思議の国のアリス」のショートバージョン。
上で紹介した1音節版の半分の長さしかありません。その代わり、普通の単語がさくさく出てきます。
1音節版とどちらでもお好みの方を。え? 多読なんだからもちろん両方読むって?(笑)

Peter Rabbit
タイトル 作者 単語数 語彙数 FK
The Tale of Peter Rabbit Beatrix Potter 943 362 7.1
The Tale of Benjamin Bunny 1130 376 7.8
The Tale of Mrs. Tiggy-Winkle 1371 485 7.2
The Tale of the Flopsy Bunnies 1015 343 6.2
The Tale of Mr. Tod 4769 1004 6.7
ピーター・ラビットのシリーズ。
かわいいウサギのイラストとは裏腹に、意外と難しい表現がたくさん。なんだか残酷な描写( he was put in a pie by Mrs. McGregor.「お父さんはパイにされちゃったのよ」)もあったりと、あんまり易しいえいごではなかったりします……
どの作品も、リンク先の「HTML」の行を開けばイラスト付きで読めるので、是非イラストでイメージをふくらませながら読んで欲しいですね。
上の表では最後の "The Tale of Mr. Tod" が一番長いですが、実はこれが一番読みやすいと思います。やっぱりある程度長さのある作品の方がストーリーとかつかみやすいですね。